9月の風の便り

9月になりました。10月給与から厚生年金の保険料率が上がりますが、あなたの会社には企業年金制度はありますか?

企業年金制度とは、退職金を年金で受け取れる制度を意味します。今回は企業年金についてです。

厚生労働省は725日、公的年金に上乗せする企業年金に新たな制度をつくる検討に入ったとのことです。

企業年金には企業が一定の給付額を約束する確定給付年金と、社員自らの運用で給付額が変わる確定拠出年金がありますが、この両者の中間型を想定した制度とのこと。つまり、給付額は運用成績しだいで変わるものの最低限の金額は企業が保証する制度を審議会で議論。企業が払う掛け金の非課税措置を認めるかどうか、税制改正の行方が焦点になりそうです。

厚労省は企業年金部会に検討課題を指示。新しい制度のほか、企業の事務負担を軽くしたり、確定拠出年金制度には適応されている転職者の年金資産を持ち運びやすくしたりすることを提案し、労使代表や学者で構成する委員が大筋で了承した。2015年の通常国会で関連法の改正を目指すようです。

 今の企業年金は企業か社員のどちらかが運用損失が出たときの負担を丸ごと抱えています。

確定給付型では企業が負担ますが、確定拠出型では損失の分だけ給付額が減ります。運用を誤ると本人の老後の生活設計が狂うリスクがあるため、導入しても盛り上がらないなどの理由になっています。どちらの制度を導入するにしろ、企業か社員かに負担が偏るため、企業年金の加入者は約1600万人で会社員の4割程度にとどまっているのが現状なのです。

そこで企業年金部会では米国など海外の制度も参考にして、確定給付型と確定拠出型を組み合わせた「ハイブリッド型」を検討します。労使が共同で運用して、運用成績しだいで支給額は変わるものの、最低保証額はあらかじめ決めておく案を想定する。運用損失が出た場合、社員の受取額は減るが、損失が広がった場合、企業の負担で最低額は保証する。運用の損失リスクを社員と企業が分かち合う仕組みです。

日本でも企業によっては自発的にこうした年金をすでに導入しているケースはあります。厚労省がこれを年金制度として新たに位置づけて、企業が出す掛け金の損金算入が認められれば、税負担が大幅に減り、企業にとっては導入する利点が高まることになります。

焦点はこの税制改正が実現するかどうか。厚労省は今夏の税制改正要望にもこうした制度改正を前提とした要求を盛り込む方針。一方の、財務省は新たな税制優遇をつくることには慎重な立場をとりそうで、財務省の判断が焦点になりそうです。

 公的年金は今後、少子高齢化による年金財政の悪化で支給額が減る見込み。高齢者が十分な年金を受け取り、豊かな老後を過ごせるようにするには、公的年金に上乗せする企業年金の普及は不可避ではないでしょうか。また、個人個人の積極的な取り組みがなければ、制度は形骸化していきます。導入と同時に活性化策を充実しなければ意味をなさない制度になります。導入側の「導入ありき」といった認識も改める必要があると思います。

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