10月の風の便り

いよいよ10月、今年もあと3か月となりました。

厚生労働省が930日発表した8月の毎月勤労統計調査(速報)によると、労働者が受け取ったすべての給与の平均額を示す「現金給与総額」は、前年同月比1・4%増の27万4744円となり、6か月連続で増加したとのことです。基本給などの「所定内給与」は同0・6%増の24万1875円、残業代などの「所定外給与」は同1・8%増の1万9113円、一時金やボーナスを示す「特別給与」も同14・4%増の1万3756円だったそうです。

また、同日みずほフィナンシャルグループは春に続く異例の今年2回目の賃上げを発表しました。全職員一律で0.5%の賃上げに踏み切ります。グループの銀行や信託銀行などの約3万人が対象で、国際競争が激しくなる中、優秀な人材を確保がねらい。こちらは景気拡大という側面よりも、労働人口が減る中で、人材確保のための賃金上昇という側面があります。

では、我々日本人の生活は豊かになっているのでしょうか?

答えは「NO」。物価上昇分を加味した実質賃金指数は同2・6%減で、消費増税による物価上昇に賃金上昇が追いついていない。これが実態。

つまり生活は厳しくなっているのが正しい認識です

 政府が描く「景気の好循環」のシナリオは、所得増が消費を促し、消費拡大が企業の生産拡大につながるというもの。物価上昇のペースに賃上げが追いつかなければ、好循環が途切れてしまいます。

 一方、急激な円安進行で輸入物価が上昇し、「年末以降、再び物価上昇率のプラス幅が拡大する」観測も出はじめています。輸入コストの増加は、中小企業を直撃する恐れがあります。物価上昇が、景気改善をともなわず、コスト増を主因とする「悪いインフレ」に転じれば、景気の好循環の維持には逆風となります。賃上げが中小企業に幅広く及ぶかどうかも、重要なポイントとなりそう。

実際に、10月1日から外食や航空運賃などの値上げが順次始まっています。先月に続き1ドル=110円に迫る円安もあって商品の値上げが続くとみられ、家計の負担は一段と重くなりそう。

原料の牛乳価格の上昇を理由にスターバックスコーヒージャパンは1日、「ラテ」など12の飲料をそれぞれ10円程度値上げ。「餃子の王将」を展開する王将フードサービスも人件費や豚肉・鶏肉価格の上昇を受け、ギョーザなど大半のメニューを5~86円引き上げ。

国内航空3位のスカイマークは、経営の悪化に伴って1026日から大部分の路線で運賃引き上げ。大人普通運賃の最大の引上げ率は神戸-札幌(新千歳)の約69%。

三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は自動車保険料を平均1.9%、東京海上日動火災保険は0.9%引き上げる。消費税増税などで修理費が増える分を転嫁。

 10月からは社会保険料も引き上げです。会社員が加入する厚生年金の保険料率(労使折半)は17.120%から17.474%に上がります。諸手当を含め月収30万円の人の場合、毎月の天引き額が531円増となります。

現在、臨時国会で来年10月に10%への消費税引き上げについて議論されています。消費税引き上げの狙いは社会保障対策として税収を増やすこと。景気が後退すれば、消費税率を上げても税収は減る可能性があり、慎重な判断が必要です

働き手の給与が物価上昇に見合うだけ増えなければ、消費を冷え込ませ景気を下押ししかねません。

 今後の展開を正しく読めるかどうかの眼力が問われる局面です。

Life Management Lab. All Rights Reserved.