4月の風の便り

いつもお世話になり、ありがとうございます。

桜の花も今週が見ごろを迎えている地域が多いようですね。季節は廻っています。

社会人は320日入社もあれば、今日41日に入社式の企業も多いでしょう。

来週は入学式のご家庭も多いと思います。

 さて、昨年四月に「コレカラの時代は「創造性」を競う時代になる」とお伝えしていましたが、今回は最近話題の「人工知能(AI)」について考えてみたいと思います。

 

■人工知能のトロッコ問題

 人工知能のトロッコ問題(トロリー問題)をご存じでしょうか?

これは、現在開発が進んでいる自動運転自動車でも課題とされている問題だそうです。具体的には、「ある人を助けるためにほかの人を犠牲にするのは許されるか?」という倫理学の思考実験がされています。

 「線路を走っているトロッコが制御不能になった。このままトロッコが進むと線路前方にいる5人の作業員が死んでしまう。このとき現場で、この状況を目撃したAさんは線路を切り替えることのできる転轍機のそばにいた。切り替えれば5人は助かるが、切り替えたほうの線路にいるもう1人の作業員Bさんは死んでしまう。」このようなケースに「どうすれば正しいとするか」です。

 つまり5人を助けるために1人を犠牲にしてもよいか」という道徳的ジレンマに関する問題だそうです。あなたはどう答えますか?

 この問題には、派生した別バリエーションがあります。

Aさんの隣にはBさんがいて、Bさんを線路につき落とせば、トロッコは確実に止まり、5人を助けることができる。しかしBさんは確実に死ぬ。どうせればいいと思いますか?」

 この2つの問いを5000人以上に聞いたところ、最初の質問には89%の人が「5人を助けるために1人を犠牲にしてもよい」と答えたといいます。

しかし、2番目の質問で「Bさんをつき落とすことは許される」としたのはわずか11だったそうです。

2つの質問の違いは、1人の犠牲者の「出し方」だけ。命を奪うことに関して、私たちの中には確実にブレーキが存在します。そして、「自分の関与が薄いほうを選ぶ」傾向があるということです。

 

■トロッコ問題解決がなければ自動運転車の普及はない?

 このトロッコ問題は、米グーグルや世界中の自動車メーカーが研究する自動運転車に必要な人工知能でも考慮しなければならない問題です。

 例えば、「凍結した路上に、自動運転のクルマがスリップを引き起こさざるを得ないスピードで進入してきたとします。そしてスリップし、前方には通学途上の多くの子どもたちがいて事故は避けられません。ただし、搭載された人工知能には逆ハンドルを切るプログラミングがされ、コントロールできるとします。道路前方の左端に突っ込んでいけば、子どもの犠牲は減る可能性がある。しかし、クルマはガードレールを突き破り、運転手が崖下に転落する。」

 この場合、人工知能にどのような判断をさせればいいと思われますか?「乗員を犠牲にして、前方の子どもを助ける」のでしょうか?しかし、乗員を犠牲にするプログラムがなされたクルマは売れないでしょう。

 「人数の少ないほうを犠牲にする」とプログラムすればいいのでしょうか?すると、人工知能には「Bさんを線路につき落とす」可能性が高まります。「助けるために殺人を犯すことを肯定する機械」が出現することになりますね。

 この概念の延長は、「人工知能を搭載した殺人兵器」です。「ターミネーター=破壊的ディストピア」に一歩近づきます。

 ■ロボット三原則

・第一法則:ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

 ・第二法則:ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。

 ・第三法則:ロボットは前掲の第一法則,第二法則に反するおそれのない限り,自己を守らなければならない.

 これは、SF作家のアイザック・アシモフが1950年に短編集『I, Robot』(邦題:『われはロボット』)で提唱したロボット三原則ですが、こうプログラムしたとしても問題は解決されないでしょう。

 ■自立する機械には「倫理」が必要

 ドイツのメルケル首相が脱原発を決める際に哲学者や宗教家を引き合いに出したように、人工知能の開発にも、「倫理学者や法学者、哲学者、宗教家など」が参加することになるそうです。「この先に人間がどんな社会をつくっていくのか」という議論になるはずですから。

 グーグルが社内に「人工知能倫理委員会(AI ethics board)」の設置をしたのが、2014年。日本の人工知能学会で第1回目の倫理委員会が開催されたのが201412月とつい最近のことです。

 AIの能力の高さが目立ってきた

 3月に驚きのニュースが報道されました。囲碁ソフトが、世界最強との呼び声も高い囲碁九段、イ・セドルとの5連戦で、41敗と圧勝したとのことです。囲碁の手数は理論上10360乗もあり、人工知能がトップクラスのプロ棋士に勝つにはあと10年はかかるといわれていたが、あっさりとそれを覆したのです。

 このように、人工知能は予想を超える速さで進化していいます。限定した局面でなら、人間の能力を軽く超えることがわかっています。2020年には、どんな人工知能が出現するでしょう。

 10年後に現在の仕事の半分がAIに変わる

 囲碁の例と同様のことがビジネスの世界にも登場するでしょう。英オックスフォード大学オズボーン准教授が2013年に発表した論文は世界に衝撃を与えました。

内容は、米国の702の職業別に機械化される確率を示したもので、「今後1020年で47%の仕事が機械に取って代わられる高い可能性がある」と結んでいます。

 日本も同様で、労働政策研究・研修機構が公表した「職務構造に関する研究(2012年)」で分類している、日本国内の601の職業に関する定量分析データを用いて、オズボーン氏が米国および英国を対象に実施した分析と同様の手法で行い、その結果をNRIがまとめました。それによると、これから10年で日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能やロボット等により代替できるようになる可能性が高いと推計されました。

 いよいよAIが働く現場で主人公になる時代」が近づいています。企業も人中心から、AIを採用し省力化を図るという戦略を取り始めるでしょう。ソフトバンクが発売した人工知能搭載ロボット「ペッパー」は、業務用に携帯電話や不動産会社の店頭、ホテルなどの接客のシーンですでに活躍し始めています。当然、中途半端なアルバイトを雇うよりも、安定的なサービスを継続的に24時間提供することが可能なわけです。何よりも、記憶は情報をインストールすれば、作為的にデリートしない限りすべて記憶され続けるのですから。

 我々は「AIに変わりにくい分野は何か」を考えながら、日常生活を送る必要があります。そして、「感性と創造性を磨く」こと、「ユニークな経験を積む」こと、などやるべき課題は山積しています。

目の前の仕事に忙殺されているだけでは、未来は保障されないかもしれません。

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