11月の風の便り

「生涯現役時代の足音1」

■「70歳まで就業」本格議論へ

報道によると、「未来投資会議(議長・安倍首相)」で、70歳まで働くことのできる環境を整えるための議論がスタート。人生100年時代を見据え、意欲のある高齢者が長く働けるようにする。65歳までの「定年延長」などから、70歳まで働き続けられる仕組みを整えるという。

「高齢者の希望や特性に応じて多様な選択肢を許容する方向で検討する」と安倍首相は10月22日の未来投資会議で述べている。今後は、2019年夏に政策の方向性を固め、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)での議論を経て20年の国会に関連法案の提出をめざす。今回の案は、一律に法制化するのではなく、就業機会を増やすという提案なので、広く社会に広がることが予想されている。

■高齢者雇用安定法とは?

現在、「高年齢者雇用安定法」は希望者全員を65歳まで雇用する義務を企業に課している。企業は(1)定年延長(2)定年制廃止(3)嘱託など再雇用――のいずれかで対応する必要がある。

さらに「70歳まで」の就業をどう確保するか。人手不足が深刻になるなか、高齢者雇用の拡大に声高には反対はできないが、高齢になるほど健康面などで個人差が大きくなることへの配慮も望んでいた。

■ダイバーシティマネジメントの強化へ

未来投資会議では、65歳まで働いた会社やそのグループ会社以外で働くことも認める方向で議論が進みそうだ。取引先への転籍なども多様な選択肢が広がる可能性があるということになる。今後も進む、少子高齢化時代に生産年齢人口が減るなか、高齢者の活用は日本の将来のポイントの一つになる。

内閣府の調査では6569歳の高齢者の約65%は「仕事をしたい」と感じており、実際の就業率(約44%)との差が大きい。弊社の個人診断でも50代の受診者4500名の内、18%が「生涯現役」を希望している。

■企業側の負担も重い?

一律70歳まで雇用する義務を負うと、企業の人件費が膨らみ経営の重荷となりかねない。

従来、毎年一定の退職者が出ることで、世代交代という新陳代謝が進んだ面もある。これまでの延長のような画一的な継続雇用年齢の引き上げでは、こうした機能が損なわれる懸念がある。逆に、これまでのOJT中心の人材育成から「リカレント教育」へのシフトも企業の責任として実施することになる。

■転職時代拡大か?

未来投資会議では中途採用の拡大に向けた議論も始まっている。新卒の一括採用に重点を置きがちな大企業に、中途採用比率の公開などを求める方針。中途採用に積極的な企業を集めた官民の協議会を11月にも設置する。先進的な事例を全国に展開し、機運を高める。

労働力調査によれば転職者数は年々増え、2017年は311万人と5年間で約1割拡大。それでも年齢別にみると40歳代半ばまでは多い一方で、高年齢層の転職者はまだ少ない。

■キャリアデザインの時代へ

政府も、高齢者雇用を進めていくうえでも、一つの企業で勤め上げるのではなく複数の企業でキャリアを積み、年功序列ではなく能力に応じた賃金体系に変えていきたい考えのようだ。

いよいよ日本も超高齢化と労働力確保が本格化し、今回の70歳定年時代に向かう。そもそも、どこの会社で働くかは個人の自由で、日本はもっと働き手は流動化していいはず。

「日本人は就職ではなく就社している。」と言われて久しいが、今後は「就職」に軸足を置くべきではないだろうか?つまり、キャリアデザイン上、「どこで働くか」よりも「何で働くか」が重要となる。

例えば、営業のプロとして生きていくのか、財務のプロとして生きるのか、法務のプロかなど。同時に、管理職という位置づけも変わる。どこの会社でも、どんどんポストは減っている。人生100年時代には新しいキャリアデザインの発想が必要だ。

これまで、私自身も4つの業界や4つの職種を経験してきたが、後半になれば職種はミックスしていき、最終的に起業につなっがている。キャリアチェンジによって収入が大きく落ちた経験はないし、独立してもそれは変わらないこ。一般的に言われる、「転職による年収のダウン」はイメージではないだろうか、大事なのは「本人の市場価値」を上げ続けることだ。常に、自分の市場価値を考えながら仕事に従事すれば、次に何をすべきかは自ずと見えてくる。

「働き手の自立意識向上」が日本人のこれからのテーマだ。

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