7月の風の便り
7月に入りましたが、6月に新たな紛争が勃発しました。イスラエルは、イランへの攻撃を20年かけて準備してきたということです。イスラエルの当局は数十年前から、イランの核兵器開発を許すわけにはいかないと主張。イランの核開発計画を破壊するためには武力行使をいとわない考えも明確に示してきました。
■なぜ今、攻撃したのか。
イスラエルが攻撃を決めた背景には次のような要因があったといいます。
1つ目は、2023年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル襲撃で、イスラエルが先鋭化したこと。
2つ目は、イランの防衛態勢が過去と比べても大幅に弱まっていることです。
3つ目はイランが短期間で核兵器を製造できる段階に近づいていることです。
4つ目は、イスラエルが、中東を劇的に作り替え、地域大国になることについて自信を深めていることです。
5つ目は、パレスチナ自治区ガザでの飢饉(ききん)寸前の状態をめぐり、国際社会からのイスラエルへの非難が大きくなっていることです。
6つ目は、イスラエルがトランプ米政権とイランの核協議を信じられなくなったことです。
■米国との協議を妨害?
イランと米国の重要な交渉が週末の6月15日に予定されていたことから、イスラエルは協議のプロセスを妨害したことになります。トランプ政権も攻撃がありうることを十分に認識していました。協議を前に米政府高官は欧州から訪れる要人に対し、イランと合意がまとまりそうだという見方を示していました。
イスラエルのネタニヤフ政権は最近、レバノンでヒズボラを攻撃し弱体化を成功させた前例があります。そのため、イスラエルは自制を求める米国の要請を無視できるかもしれないこと、イスラエルが攻撃を仕掛けても、米国とその同盟国がイランによるあらゆる報復からイスラエルを防衛することを知っているのです。
とはいえ、もしイスラエルが米国を無理やり新たな中東戦争に引きずり込んだとみられることになれば、米国に長期的な代償を払うことになるリスクがあります。世界的に石油価格が上昇すれば、インフレの抑制に苦慮しているトランプ政権も立場がありません。
■ひとまず危機は回避
トランプ米大統領は6月23日夜、イスラエルとイランが「完全かつ全面的な停戦で合意した」とSNSに投稿しました。戦争の終結により中東情勢が緊張緩和に向かうのか注目されますが、核開発を巡る米・イラン間の協議は再開の見通しが立っておらず、根本的な解決には至っていません。現時点では「とりあえずの停戦」に過ぎず、安心するには時期尚早といえます。
しばらく中東の動きから目が離せません。戦闘が再燃するようなことがあれば、株式市場に対しても悪影響を及ぼすことは明らかです。