7月の風の便り

日本が初めてホスト国なった、G20サミットが大阪市で6月28,29日に開催されました。

米中貿易摩擦が長期化する中、宣言に「自由で公正かつ無差別な貿易・投資環境の実現に努める」と明記。世界経済をめぐり、貿易や地政学上の緊張が高まっていると懸念を示し、「リスクに対応するため、さらなる政策をとる用意がある」と強調。ただ、米国の強い反対から、首脳宣言に「保護主義と闘う」といった文言を盛り込むことは2年連続で見送りとなりました。

日米欧に中国などが加わる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が創設されたのは2008年11月。目的は2008年9月のリーマン・ショックが、保護主義を招いて世界恐慌に発展するのを防ぐためでした。G20がワシントンで開かれた第1回サミットで危機感を共有した背景には、米国が引き金となった保護主義拡大の歴史の苦い教訓があります。

1929年の株価大暴落後、米国はスムート・ホーリー関税法で約2万品目の輸入品に高関税を適用。当時は、フランス、英国、ドイツなどが対抗措置を発動し、世界貿易は急激に縮小。米欧などの経済停滞と対立は第2次世界大戦を引き起こす要因となりました。まさに、米中貿易戦争で展開されている関税の引上げとシンクロします。G20ワシントン・サミットでは、金融・財政政策の総動員に加え、「保護主義を拒否する」と宣言。保護主義の拡大をけん制できた歴史があります。

「アメリカン・ファースト」を掲げるトランプ政権の登場後、内向き志向が世界に広がり、自由貿易よりも自国産業を優先する保護主義は着実に台頭しつつあります。

米中会談で過度な関税規制は見送ることになりましたので、急激な経済の悪化はさけられたかもしれません。トランプ大統領は来年大統領選挙を控えており、今後もその言動から目を離せません。

世界経済の環境は大戦前とは異なるものの、米国が今後も貿易の壁をつくり続ければ、世界が保護主義に走る可能性もあり、G20以降の国際情勢には引き続き注視しなければなりません。

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