8月の風の便り

灼熱夏が来ています。こんな時は仕事終わりのビールが最高ですね。

今回は、ある雑誌で、銀座の有名クラブのママの話が興味深かったので取り上げようと思います。テーマは「真の教養とは」というテーマ。

難しい本をたくさん読み、懸命に勉強して、多量の情報をインプットしてみても、一夜にして教養は磨かれるわけではない。知識は豊富だけれど話してみると残念な人も多い。本当の教養とは、「学問・知識などによって培われる品位や立ち居振る舞いといった人の内面までも表す」もの。

人間の本質が表れるのもこのお酒の席。「お酒の飲み方や酒席での立ち居振る舞いに、人間としての素の部分がそのまま表れる。・・・お酒を飲むときの品位とも言っていい『酒品』は、その人の本来の姿でもある。」

■嫌われる会話泥棒

にわか仕込みで得た知識や教養をひけらかすのは、傍から見ていても聞き苦しいものだが、人が気持ちよく話そうとしているところに割って入り、話を横取りして自分の知識をひけらかす「会話ドロボー」も明らかなルール違反。

会話は周りの人とのキャッチボールが大切。話したいことやすぐに聞いてほしいことがあると話し始めた相手の横から口を挟み、ひょいと話題を盗み取り、盗んだ話題をすべて自分の話にすりかえて、自分が会話の中心に立とうとする人がいます。これでは、話し手の立つ瀬がありません。

また、「知識はあっても楽しい粋な会話ができなければ、その場の空気を読めない無粋な人でしかない」という。そういう人にかぎって、話してみると「知識として知っているだけで、ストーリーになっていないのでおもしろみがない」と言う。

知識を深く理解している粋な人は、相手に合わせて自分の幅広い知識の中から興味のある話題を上手に取り出すことが出来る。そういう人は、ご自分のほうが詳しい事柄でも、相手に合わせて、相手をいやな気にさせない。

また、声のトーンも大切で、同じテンションで話し続ける人もいますが、解説者みたいで頭に入っていかない。知識の重み、それに品性を備えている人は、自身のことはあまり話さないそうです。

「自分が話したいときでも、相手のことを思って、話したいことが10あれば、それを我慢して1に抑えて話す方は気遣いのできる素敵な人」なのだという。

 

■札幌のバーで学んだこと

話しは変わりますが、7年ほど前に仕事で札幌に行った時に、ある本で紹介されていた「日本最高齢のバーテンダー」である山崎さんのバー()に伺った時のこと。たしか、当時92歳(2016年11月に96歳で他界)だったと記憶している。高齢の為、平日の1時間しかお店には立たないのだが、運よくご本人の働く姿を拝見することが出来た。

お店に入った瞬間「いらっしゃい」。とても感じのいいお店だった。カウンター席とボックス席で20名くらいで満席のお店だ。当日もお店は盛況で、私はカウンター席の端に座った。メニューを見ていると、山崎さんはおもむろに紙とはさみを手に取り、きり絵を始めた。お客さんに頼まれ横顔の輪郭を切っている。見事な「はさみさばき」だ。92歳とは思えない。姿勢も背筋を伸ばし、背中も曲がっていない。

その姿に目を奪われながら、カクテルをいただいていると電話が鳴った。どうもマスターの家族からだ。「そろそろ時間なので、帰るように伝えてほしい」といっている。いよいよ、山崎さんも帰宅の時間だ。

すると、びっくりする光景が目に飛び込んできた。背筋をピンと伸ばし、一人一人に「お先に失礼しますが、どうぞゆっくりされてください」とあいさつをされるのだ。

ついに、私の前にこられて、あいさつをされた。「一元様の私にまで・・・」驚いた。これはいつものセレモニーらしい。「これが最高齢の働く姿か・・・」と感銘を受けたのを覚えている。それ以来、全国に仕事で行くと「地元最高齢の方の店」を訪ねることが趣味の一つになっている。

酒場でも学ぶことは多い。

 

※バー山崎

http://www.bar-yamazaki.com/

Life Management Lab. All Rights Reserved.