9月の風の便り
猛暑がなかなか収まらない中、9月を迎えました。
今回は日本のマスメディアではあまり報道されませんが、かねてより米国トランプ大統領が問題視している「フェンタニル」問題についてご紹介しようと思います。
日本に拠点を置いていた合成麻薬「フェンタニル」の密輸組織が多国間にまたがる大規模な不正取引ネットワークを築いていたことがわかってきました。
日本経済新聞が欧米調査機関と共同で、暗号資産(仮想通貨)の流れや取引先情報を調べて判明した。メキシコと米国の麻薬カルテルだけでなく、ロシア、オーストラリア、インドなど世界各地に取引先がおよんでいたといいます。
組織は中国の工場からフェンタニルの原料となる化学物質を送り出していました。国際的な麻薬事件で疑いの目を向けられることが少なかった「安全圏」の日本を利用し、薬物の集配送や資金管理を指示する活動基地にしていた可能性が高い。薬物密輸の日本経路をめぐっては、米麻薬取締局(DEA)が本格捜査に乗り出している。日本も関わるフェンタニル問題は大型の国際麻薬事件に発展する恐れが出てきました。まさに、現代版「米中アヘン戦争」の様相を呈してきています。
フェンタニル(Fentanyl)は非常に強力な合成オピオイドで、医療現場で鎮痛剤として使われる一方、近年は乱用や過剰摂取による社会問題にもなっています。
1. フェンタニルとは
①分類:合成オピオイド(麻薬性鎮痛薬)
②開発:1960年にベルギーの製薬会社ヤンセン社が開発
③作用機序:脳や脊髄のオピオイド受容体に作用し、強力な鎮痛効果と多幸感をもたらす
④医療での用途:がん末期などの強い疼痛管理、手術時の全身麻酔等で使用されます。
2. フェンタニルの特徴
①高い鎮痛効果:ルヒネの約50〜100倍の鎮痛効果があります。
主にがんの末期疼痛や大手術後の強い痛みに使用されます。
②即効性と短時間作用:与後すぐに効果が現れ、作用時間は比較的短いです。
静脈注射・貼付剤・舌下錠・点鼻スプレーなど、さまざまな投与方法があります。
③依存性・乱用の危険:に強く作用するため、依存症や過剰摂取のリスクが非常に高いです。
④過剰摂取の危険性:量で致命的な呼吸抑制を引き起こす可能性があり、医師の厳重な管理下で使用されます。
⑤医療用と違法薬物の違い:療用フェンタニルは適切な用量で処方されますが、違法フェンタニルは不純物や過量であることが多く、危険性が高まります。
3. フェンタニル乱用が社会問題化している理由
特にアメリカで深刻ですが、世界的にも問題になっています。
(1) 違法フェンタニルの流通
中国やメキシコなどで違法に製造されたフェンタニルが、粉末・錠剤・液体などの形で米国へ密輸。多くは「偽造鎮痛薬」や「偽造抗不安薬」に混ぜられて販売されています。
(2) 過剰摂取による死亡者の急増
米国では2022年、オピオイド関連死亡者数 約10万7千人のうち、約7割がフェンタニル関連です。ごく微量(約2mg=塩粒数粒程度)で致死量に達します。他の薬やアルコールと併用すると呼吸抑制がさらに強まり、死亡リスクが高まります。
米国の都市部の周辺にこの薬物の中毒者が大量に路上生活をしている映像は拝見しましたが、中毒性が強く摂取してしまうと結果的に死に至るケースが多いとのことです。国際問題になっているこの問題ですが、中国などで製造されているとのことですが、中国政府はこの件に関してはコメントしていないようです。国際社会で大国のひとつとしてこの問題に積極的に取り組まないことは、中国にとってもマイナスなため、積極的な取り組みが望まれます。